【非戦の声⑯】大橋正明 シャプラニール評議員/CWS Japan理事

NGO非戦ネット呼びかけ人 大橋正明
シャプラニール=市民による海外協力の会 評議員 / NPO法人CWS Japan理事 / NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)理事 / NPO法人ヒューマンライツ・ナウ理事 / NPO法人アーユス仏教国際協力ネットワーク理事

NGO非戦ネット呼びかけ人 大橋正明

軍の力で、日本を本当に守り続けることが出来るのでしょうか?

今回の安保法制が必要だという主要な理由の一つは中国の台頭ですが、中国のような大国と本当に日本は軍で張り合い続けていけるのでしょうか?「だからこそ日米同盟が大事だ」という意見も強いのですが、本当にアメリカはずっと日本と同盟であり続けてくれるのでしょうか?多くの人は記憶にないでしょうが、アメリカは1971年、日本政府にも隠して戦後ずっと同盟だった中華民国(台湾)を突然見捨て、中華人民共和国(中国)と手を結んだのです。アメリカがいつか突然、日本を中華民国のような立場に立たせない、と誰が保証できるのでしょうか?

だからこそ日本の軍備をもっと増強して、日本単独でも防衛できるようにすべきである、いう勇ましい声も聞こえてきます。地球を何度も破壊し尽くすだけの核兵器と、宇宙から世界のどこでも見張れるようなハイテクを持った超大国を相手に、日本はどれだけの軍備を持てば、自分で自国防衛できるのでしょうか?そんなことをしていたら、かつての米ソのような果てしなき軍備拡大競争に日本が陥るだけではないでしょうか?それとも有る程度の軍備を持って何日間か持ちこたえれば、また神風が吹いて超大国の軍を吹き飛ばしてくれる、とでもいうのでしょうか?私にはこうした議論が、幼稚で非現実的に見えてなりません。どうしてそうなのか、以下で説明します。

私は赤十字や日本のNGOの一員として、バングラデシュやネパールに長年関わってきました。この南アジア地域では、13億人の人口を抱えるインドが圧倒的な地域大国です。このインドに軍備的にそれなりに対抗しているのは、これまでに三度戦火を交えた西隣のパキスタンだけ。インドとパキスタンは各々核兵器を保有し、互いにけん制しています。両国とも貧困や格差という深刻な問題を抱えているのに、巨額な資金を軍備に費やしていることは、NGOの一員としては残念です。

ところでこの地域の他の小国、つまりネパール、ブータン、バングラデシュ、スリランカなどは、大国インドの圧倒的な軍にとっては、赤子の手を捻る程度の軍備しか有していません。それでもこれらの国々はこれまでインドに侵略されたり、併合されたりしませんでした。今後もそうならない保証はもちろんできませんが、逆にこれらの小国が自前でインドに対抗するだけの軍備を持つことが出来ないことはほぼ保証できます。彼らは苦労しながらも、英知を出し合ってこの大国とうまく付き合ってきているのです。

今の日本ではほとんど顧みられることがありませんが、私は非武装中立論が一番正しいと思っています。「それは理想に過ぎない。現実は甘くない」と反論されますが、私たちNGOは世界から飢えや貧困、差別や人権侵害、環境破壊などがなくなるという理想を目指して、日々活動しています。この理想主義が、私をNGO活動に駆り立て、そして非戦を訴えさせます。この立場こそが、世界中の市井の人々が願う持続的な平和の実現への道だと感じる私は、非現実的なのでしょうか?


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