NGO非戦ネット呼びかけ人
NPO法人地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL) 理事 / NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)理事
清水俊弘
11月13日にパリで起こった「テロ事件」は、市民の日常生活を恐怖のどん底に陥れた。この事件を仕組んだとされるIS(「イスラム国」)に対して、オランド仏大統領は「野蛮な行為」と非難し、報復として空爆の規模を拡大した。14年前に発生した「9・11」事件以降続いている「テロとの戦い」は時に「文明の衝突」と言われることもある。爆破テロにしても、空爆にしても「野蛮」な行為であることは違いない。パリで起きたことはシリアでは常態化した恐怖でもある。
「文明人」による「野蛮人」との衝突として対話の余地もないような戦いを演出する先に何があるというのか?この世界に文明があるというならば、武力による威嚇、攻撃を排し知性と対話による解決を実現すべきだ。
予め相手を「敵」としかみない態度からは、闘う以外の解決手段を見出す積極性は生まれない。一方相手を「立場の異なる存在」として知ろうとする姿勢には闘う以外の無限の選択肢を生み出す可能性がある。
今世界で起きている問題の所在は決して「謎」ではない。歴史を辿り、今を直視すれば解決すべき課題は見えている。それをごまかし「テロには決して屈しない!」と拳を掲げてもなんら説得力はない。
多くの乗客を乗せた旅客機が着地する際には多種多様なチェックリストに基づいて安全な着地を目指す。戦争にも市民の安全をとり戻すための厳格なチェックリストが必要だ。
テロとは無関係の市民を守ること。空爆を停止すること。なかでも無差別性の高い兵器の使用は即刻禁止し、国際法を遵守すること。アサド政権、ISを含むシリア内戦の全当事者への支援(資金、武器供与)をやめること。停戦合意を目指すラウンドテーブルを設けること。イスラム社会との対話を促進し、相互理解を高めること。アフガニスタン、イラクの社会秩序を回復すること。そしてパレスチナの人々が抱える問題に真摯に目を向けることなど。多様なNGOの活動はそれぞれこれらの必要事項とリンクしている。現場での活動に加え、政府や地域社会の中で解決に必要な手立てがなされているのかいるのかをウォッチし、問題提起していくことも大事な仕事だ。
本当の意味での「文明社会」は公正で公平な社会秩序の中でしか生まれない。
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